春の星空を撮る



春は黄砂に加え花粉も入り交じってなかなか済んだ星空は期待できない。
しかし時として、湿度が低く、透明度の高い星空に恵まれることもある。

0時少し前の月没を待って、町の方まで山を下りていく。
揖斐谷は狭隘な山間部なので、この時期の春の大三角、さらには春のダイヤモンドの全貌を捉えることは難しい。
ここならどうかな、と目星をつけてセットする。
日付が変わる頃はさすがに冷え込むが、湿度が低いので、短時間の撮影では結露の心配はなかった。

使用したレンズは、星野撮影の定番レンズと言っても過言ではない、FE 20mm F1.8 G 。
20mmという超広角レンズだが、撮影画像を等倍で確認すると、北斗七星の二重星 ミザールとアルコル がしっかり分離されている。ミザールとアルコルは、かつて兵士の視力検査に使われたという。
もっともミザールは2つの恒星から成る連星でそれぞれが分光連星、アルコルも分光連星であるから、合わせて六重連星系を構成するという、目が回りそうな世界だ。

左に北斗七星、中央右に赤く輝くアルクトールス、さらに右にたどるとスピカへ続く春の大曲線。春の星の中で、アルクトールスの明るさは格別だ。
アルクトールスの上方、画像の一番上近くにデネボラ、右の山際に樹木の間から出現しようとしているスピカ。これで春の大三角が完成する。

アルクトールスとデネボラを一辺として、左に伸ばすとりょうけん座のα星コルカロリが見つかる。三等星でそれほど明るくないが、近くに明るい星がないためよく目立つ。この星を頂点として、アルクトールス、デネボラを結ぶと三角形が出来上がる。
これを右側の春の大三角と合体させると春のダイヤモンドが完成する。

デネボラの左下に暗い星が集まっているのが、かみのけ座。アルクトールスのやや左下、画像の端近くにかんむり座。
空気がよどむことの多い春の夜、これだけの星はなかなか見られない。

星が見られる。
それだけで何も望まない。




2022年3月9日00時56分撮影

α7M4 + FE 20mm F1.8 G、20mm、ISO800、f2、30秒×4枚をダーク減算後加算コンポジット処理、マニュアルWB、Raw、ケンコー PRO1D プロソフトン[A](W) + マルミ光機 スタースケープ、赤道儀で恒星追尾撮影